1. 独り佇む影

霧が街を覆い尽くす静かな夜だった。
細い路地の奥、ひと気のない工場跡地の屋上で、Kainは一人、月を見上げていた。

「……まただ。」

目の前に広がる異様な光景。冷たい月光に照らされ、闇の中から黒い影が蠢き出す。
人の形を模したその影は、じりじりとKainの方へ近づいてくる。

Kainは手に握る剣を見つめた。それは数日前、突然現れた奇妙な武器だった。刃には狼の牙のような刻印が浮かび、触れるたびに体の奥から熱い何かが湧き上がる感覚があった。

「お前ら、何者なんだ?」

返事はない。ただ影が低く唸りを上げ、襲いかかる。