かつて、ちいかわを苦しめた黒い流れ星が、島に突如として現れた。ちいかわ達に静かな声で「アーユーハッピー?」と問いかける。

ちいかわは首を横に振る。流れ星は「ディール」と一言。
ハチワレが驚き、「取引をすれば過去に戻してくれるってコト?!」と叫ぶ。
その取引の条件は、一葉と二葉が永遠の命を放棄し、有限の命へと戻ることだった。

一葉と二葉は互いに顔を見合わせ、小さく頷いた。この瞬間、二人はモブの島民から運命の主役へと昇華し、手を繋いで未来へと踏み出す決意を固くした。
その光景を見ていた黒い流れ星のウィンクと共に、世界がぐるぐると回り始め、気づけば、ちいかわ達は島へ上陸した瞬間に戻っていた。

時間の巻き戻しとともに、島の記憶も初期化された。しかし、ちいかわは過去の記憶を失っていなかった。

新たな朝が迎え、ラッコ先生が明るく「おはようッ」と声をかける。
ハチワレも「おはようございますッ」と答え、ラッコ先生は「島の住人からなにか話があるらしいな」と告げる。
群衆の中には、なんとかつて敵対したセイレーンと、人魚"3匹"が、何もなかったかのように溶け込んでいた。

セイレーンがちいかわを見つめながら、意味深に語りかける。
「ありがとう、私たちに歌声を取り戻してくれて」と。

島民たちが発表した討伐対象のイラストは、キャロライナリーパーの絵だった。ハチワレが「あの唐辛子、草むしり検定の問題で見たよ!大量繁殖して苦しめられてるってコト?!」と叫んだ。
セイレーンはちいかわを見つめ「あれは本当に刺激物さ、以前食べさせられて『わかった』からね」と温かな表情で語った。この言葉に、ちいかわの目がわずかに光った。
ちいかわとセイレーンだけが、時を越えた絆で結ばれていることを確認し合うような、静かなる理解の瞬間を共有していた。

その頃、一葉と二葉は集団から離れた場所に静かに居た。
もう電池の蓋がない体を撫で合いながら、手を繋ぎ笑顔で歩き出す。
手と手を結び、限りある命の重さと、その尊さを胸に刻む。

島の花が道を飾り、穏やかな海が時間の流れを映す。
この限りある時を、二人は歩み始める。
島の風が二人の旅立ちを優しく祝福し、有限の日々を精いっぱい生きる決意を、彼らは静かに固めたのだった。

【終】